浄土真宗は現在、日本の仏教の中でもっとも信者数が多い宗派です。しかし一方で、家族の葬儀を営むまで、自分の家の宗派を知らなかったという方も少なくありません。本記事では浄土真宗の基礎知識と、浄土真宗を理解する上で欠かせない仏壇についてご説明していきます。
目次
浄土真宗の基礎知識
そもそも浄土真宗とはどのような宗派なのでしょうか? 簡単に解説をしていきます。
浄土真宗のご本尊について
浄土真宗の本尊は阿弥陀如来です。阿弥陀とは、サンスクリットで無限の光を持つ者を現すアミダーバと、無限の寿命を持つ者を現すアミターユスを音写したものです。時間と空間の制約を受けず、あらゆる人々に救いを届けるとされています。
戒名ではなく法名
仏教では、亡くなった人は仏の弟子になるとされ、葬儀の際に僧から戒名を授けられるのが一般的です。しかし浄土真宗では、人間は仏の弟子として戒を守れるほど強いものではないが、阿弥陀如来はそんな人々にも救いを届けてくれると考えるため、戒名の代わりに法名を用います。
礼拝の意味
浄土真宗の教えでは、阿弥陀如来があらゆる人々を救いたいと祈り、その結果として私たちが救われているという考え方をします。ですので浄土真宗の礼拝には明日晴れますようにといったような願い事をするのではなく、いつも私たちのために祈ってくれてありがとうございますと、阿弥陀如来にお礼の挨拶をする意味合いがあります。
礼拝の仕方
1.本尊の前で、念珠を持った掌を合わせ、合掌をします。
2.合掌をしたまま南無阿弥陀仏と何度か繰り返し唱えます。
3.その後、角度45度の状態でお礼をします。
4.最後に、合掌を解きます。
浄土真宗における念珠の持ち方
仏教における念珠は、魔除けの他、念仏の回数を数える役割もあります。しかし浄土真宗では念仏を唱える回数が特に決まっていないため、数珠も蓮如結びという念仏の数取りが出来ないような結び方をされています。念珠の持ち方は宗派によって異なりますが、浄土真宗の中でも、真宗本願寺派と真宗大谷派によって違った持ち方をします。
真宗本願寺派
二重に巻いて合唱した手に掛けます。この際に房は真下に垂らします。
真宗大谷派
二重に巻いて合唱した手に掛けるのは真宗本願寺派お同じですが、房は左手の側に甲に垂らします。
浄土真宗の仏壇の飾り方は?
浄土真宗における仏壇の飾り方について解説していきます。
浄土真宗の仏壇について
現代では、故人と対話する場所として捉えられることが多くなった仏壇ですが、本来は信仰の対象である本尊を祀る場所です。浄土真宗の仏壇は、死後に行くことになる極楽浄土を、いわばミニチュアとして再現したものですので、他の宗派と比べても豪華に飾り付けた金仏壇を置きます。
仏飯の盛り方
仏壇に置く仏飯は、本来故人でなく、本尊に対してお供えするものです。お供えする仏飯の盛り付け方は、真宗本願寺派か真宗大谷派かでそれぞれ異なります。西真宗本願寺派では、蓮のつぼみのように小高く盛り付けます。真宗大谷派では、盛糟という道具を使い、円筒形に盛り付けてお供えします。
茶湯器は用いない
仏壇に水をお供えする際に用いる茶湯器ですが、浄土真宗では用いません。浄土には八功徳水という清らかな水が溢れているので、喉が乾くことがないと考えられているためです。その代りに、水を入れた華瓶に樒の葉を指し、飲水ではなく香水としてお供えします。
位牌は用いない
浄土真宗では、他の宗派とは異なり位牌を用いません。そもそも位牌とは、死後、仏の弟子となった個人が、修業に励んで成仏できるようにと祈りを捧げるためのものです。しかし浄土真宗では、阿弥陀如来を信じてさえいれば誰でも仏になれると考えられているため、位牌を必要としないのです。代わりに芳名軸という掛け軸や、過去帳という帳簿に法名を書き、供養を行います。
法要の際には飾り方が変わる
平時と法要の際とで、仏壇の飾り方が変わります。
平時の際は、花瓶、香炉、蝋燭立の3つの道具をひとつずつ飾り、この飾り方を三具足といいます。一方で法要の際には、花瓶と蝋燭立をそれぞれふたつずつに増やし、5つの道具を用いた五具足に加え、打敷という敷物も用いて、より豪華に仏壇を彩ります。
浄土真宗の仏壇における注意点
あらゆる人々を救ってくれるとされる浄土真宗ですが、仏壇に関しては細かな決まりごとが少なくありません。特に迷いやすいポイントについて解説していきます。
仏壇のデザインも真宗本願寺派と真宗大谷派によって違う
仏壇そのもののデザインも、真宗本願寺派か、真宗大谷派かで少し違っています。見分けるポイントは、仏壇の中の柱の色の違いです。真宗本願寺派の金仏壇は柱が金色ですが、真宗大谷派では黒い柱です。両派の違いは本記事でも書いてきたように多くありますが、中でも仏壇は高価なものですので、間違えないよう特に注意しましょう。
仏具店で木像を購入する場合
仏壇に飾る木像、仏具店にも売られているのですが、購入の際には注意が必要です。本来、浄土真宗の木像には本山による点検を受けなければなりません。この点検に合格した木像だけが、正式な本尊として認められるのですが、合格の基準はかなり厳しく、仏具店で売られているような仏像が点検を通ることはあまりないのです。特に信心深い方でなければ問題はないかもしれませんが、頭の片隅に留めておきましょう。
仏壇を置く向き
浄土真宗の仏壇は東に向けて置きます。これは阿弥陀如来のいる極楽浄土が西の方角にあると考えられているからです。仏壇を東向きに置いておくことで、そこに向き合う人は西を向くことになります。
まとめ
浄土真宗について
・本尊は阿弥陀如来。
・戒名ではなく法名を用いる。
・礼拝は阿弥陀如来へのお礼。
・念珠の持ち方は真宗本願寺派と真宗大谷派で異なる。
仏壇について
・浄土真宗の仏壇は極楽浄土のミニチュア。
・仏飯は、真宗本願寺派では蓮の蕾のように、真宗大谷派では円筒形に盛る。
・茶湯器は用いず、華瓶を用いる。
・位牌は用いない。
注意点
・真宗本願寺派と真宗大谷派で仏壇のデザインが違う。
・仏具店で買った仏像は点検に通りにくい。
・仏壇は東向きに置く。
・平時は三具足、法要時には五具足に打敷を用いる。